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何にでも効く抗菌剤は存在しないので「エンピリック治療」を
ここまでウイルス感染症と細菌感染症の違いを説明しました。細菌感染症と診断したら抗菌剤を処方しますが、実際には呼吸器感染症を起こす細菌はたくさんあり、その全てに効果がある抗菌剤は残念ながら存在しません。
呼吸器感染症を起こす原因となった菌を「起炎菌」といいます。正確な起炎菌の検出には培養検査が必要ですが、結果判明には時間がかかるため、ある程度「起炎菌」を予想して治療を始めます。
これは感染した部位、年齢、基礎疾患、流行状況などから経験的に起炎菌を想定して、その菌に有効な抗菌剤で治療を始める方法で「エンピリック治療(経験的治療)」と言います。その後の治療経過でお薬の効果を観ながら、培養で検出された菌が予想と違ったら抗菌剤の変更も検討します。

最近では、マイコプラズマ肺炎に対する治療において、エンピリック治療で使用されてきたクラリスロマイシンという抗菌剤が効かない症例が多くなっています。
このように以前は効果があった抗菌剤が効かなくなってくることを菌の抗菌剤への「耐性化」といいます。「全ての菌に効く抗菌剤」が無いだけでなく、「永遠に効く抗菌剤」も残念ながら無いということです。
このようにエンピリック治療はあくまでもある時点での標準治療であり、「経験」の積み重ねにより時代とともに変わっていくものです。当院ではしっかり検査もした上で、呼吸器感染症に関して常にアップデートしながら診療しています。