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- 肺マック症(MAC症)
増加している肺非結核性抗酸菌症、肺MAC症(マック症)の診断と治療を行います。
肺MAC(マック)症とは
最近の呼吸器疾患で患者さんが増えている病気の一つが肺非結核性抗酸菌症という感染症です。
非結核性抗酸菌は酸に抵抗性がある『抗酸菌属』という細菌のグループの中で「結核菌」と「らい菌」を除いた菌の総称で、150種類以上の菌があります。
その中で人の肺に感染する菌の約80-90%がMycobacterium avium complexという菌で略称MAC(マック)と呼んでいます。このMACの肺感染症が「肺MAC症」です。

肺MAC症と肺結核の違い
肺MAC症が肺結核と大きく異なる点は、人から人へは感染せず、土や水など、自然環境や生活環境から人への感染症ということです。
肺MAC症にかかられる方は増えており、2014年の全国の調査で肺MAC症の罹患率(りかんりつ:1年間で人口10万人のうち新たにその疾患にかかった人)は約15人で既に肺結核を上回ったことがわかりました。
この調査からさらに10年以上経過しており、外来診察での実感ではもっと患者数が増加していると考えられています。
肺MAC症の症状は?
肺MAC症は初期には症状はなく、症状が出るまでに10年以上かかることも珍しくないほどゆっくり進行する感染症です。
人に感染しないので、診断がついても症状が無ければ、治療をせずに経過を観ることもあります。
肺MAC症の治療は?
では、なぜ肺MAC症は早期治療しないのでしょうか。肺MAC症は感染症なので有効な抗菌剤を使えばよいのですが、残念ながら現在は確実に完全にMAC菌を肺から消せる抗菌剤がありません。
ある程度効果がある3種類の抗菌剤を同時に使う方法などが標準治療とされています。半年以上の長期に渡って使うので、目や腎臓、肝臓への副作用に注意しながら使う必要があります。
実際に肺MAC症の治療を始めるタイミングは以下のような時です。
- 症状が出た時
- せき、痰、血痰など
- 菌の量が多い時
- たんの培養検査の際に、顕微鏡でたくさんの菌が見える時(塗抹検査が陽性の時といいます)
- CT検査で特徴が見られる時
- 陰に「空洞」があったり、経過中に病気がひろがった時
従って肺MAC症の診断と治療にはCT検査での診断と定期観察が必要です。
治療についての光明もあり、2021年に抗菌剤の「吸入療法」が保険適用になりました。飲み薬と比べて副作用が少なく、抗菌作用も期待されています。
ただ飲み薬での標準的治療を行っても菌の減りが十分でないときなどの条件があることや、治療費が高額であること、自宅での吸入療法の器具の管理などの課題もあります。しかしながら、長らく進歩のなかった肺MAC症治療が一歩進んだことは間違いありません。

肺MAC症と言われたり、肺MAC症が心配な方は受診を
肺MAC症に「特効薬」が無いことは、診断された患者さんにとってはつらいことです。
肺MAC症といわれたらどうしたらいいかお困りの患者さんや、また呼吸器疾患が専門ではない医師の中にはこの病気とどのように向き合えばよいかお困りの先生もおられるようです。
肺MAC症と診断されても症状が無く、年単位で無治療で生活に影響がない方もおられます。抗菌剤を使わなくてもご自身の免疫力で菌の量が減る方がいることもわかってきました。
当院の肺MAC症外来では、去痰剤で症状を和らげたり、治る力や免疫力を助けるような保険で処方できる漢方治療も積極的に行い体調の改善維持に努めることも行っています。