Web予約

電話する:075-384-1626

診察時間:月-金 8時~13時/15時~18時[水曜午後休診]土 8時~12時 休診:水・土 午後/日曜日/祝日

対症療法と「せき止め」のお話

治療の中で「病気の原因を取り除くのではなく、病気によって起きている症状を和らげたり、なくしたりする治療法」を「対症療法」といいます。

例えば、インフルエンザにかかった時に、タミフルなどの抗ウイルス薬を使うのはインフルエンザのウイルスをやっつけるためですが、解熱剤を使うのは感染して体温が上がったことで「しんどい、つらい」のを和らげるための「対症療法」になります。

せきでお困りで受診される患者さんは「せき止めはもらえないのですか?」と言われます。この「せき止め」について触れてみたいと思います。

分厚い本が収納された本棚と、革張りの1人掛け用ソファ

脳の延髄というところに「せきを出せ」と指令する「せき中枢」があります。せき止めと言われているお薬の多くは、この「せき中枢」の働きを弱めることでせきを減らそうという薬です。

脳に作用するため「中枢性」のせき止めと分類されています。その中には「中枢性麻薬性」のせき止めの成分があり、厚生労働省から「濫用等のおそれのある医薬品について」の通知があり購入に制限がかけられています。この「中枢性」のせき止めの使用にはいくつかの注意が必要と考えます。

まず基本的にはせきに対する「対症療法」のお薬であるということです。例えると水道のどこかで水漏れが起きた時に、元栓を閉めるようなお薬なので、脳からの「せきを出せ」の指令を弱める作用で、水が漏れた部分を治す、つまり「せきの原因」を治すお薬ではありません。

せきはつらいものですが、例えば痰があるせきの場合は、「痰を切る」ために身体が必要と判断(生体防御機構といいます)してせきをだしているので、咳中枢を弱めてせきを止めると、痰が肺に溜まって逆効果の恐れもあります。

そして実はそもそもの「せき止め」としての効果が、あまりはっきりしていない、という問題もあります。代表的な中枢性麻薬性のせき止め成分のコデインでも急性上気道感染やCOPDの患者さんのせきに対して、実感できるような効果は得られなかったとの研究報告があります1)2)。

さらに副作用の問題もあり、眠気(濫用のおそれがあるくらいですから)や便秘が起きる割合が高いなど、長期に服用するのはおすすめしません。

しかもこれらの中枢性鎮咳剤は市販薬の成分にも含まれています。せきの治療はまず原因をしっかり見つけることと、その治療であると考えます。お薬の使用については診断結果に基づき、医師の判断で服用されることをお勧めします。市販薬で長く経過を観ることなく、早めに受診することをお勧めします。

  1. 1)Smith J, Owen E, Earis J, Woodcock A. Effect of codeine on objective measurement of cough in chronic obstructive pulmonary disease. J Allergy Clin Immunol. 2006 Apr;117(4):831-5. doi: 10.1016/j.jaci.2005.09.055. Epub 2006 Feb 7. PMID: 16630941.
  2. 2)Freestone C, Eccles R. Assessment of the antitussive efficacy of codeine in cough associated with common cold. J Pharm Pharmacol. 1997 Oct;49(10):1045-9. doi: 10.1111/j.2042-7158.1997.tb06039.x. PMID: 9364418.